こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「見上げた空の色(文春文庫)」宇江佐真理 著 を紹介します。


ウエザ・リポート 見上げた空の色 (文春文庫 う 11-20)

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≪見上げた空の色(文春文庫)の5段階評価≫   
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内容

江戸の魅力、創作の秘密から闘病記まで。


髪結い伊三次捕物余話シリーズなどで人気の時代小説作家によるエッセイ集第二弾。
函館在住の主婦でもある筆者の日々のあれこれ。



著者

宇江佐真理(うえざまり)


北海道生まれの時代小説作家。
代表作にシリーズ化・テレビドラマ化された『髪結い伊三次捕物余話』など。



感想・書評

ウエザ・リポートと書かれたこの本。
宇江佐真理さんのエッセイ第2弾です。

 
第1弾は『ウエザ・リポート 笑顔千両』というタイトルで発行されていることを、今この本の帯で知りました。(裏側だったので今まで気づきませんでした。)

 
なるべく順番に読みたい自分としては、やっちまった、、、という感じですが、読む楽しみが増えたと思いましょう。


宇江佐真理さんは、この『ウエザ・リポート』というタイトルを使いたい為に、宇江佐というペンネームを選んだ、という話はもう有名かと思います。本書の中にも、それは書かれていました。

 
全体的に淡々としたエッセイなのですが、宇江佐さんのこういう面白みというか、こだわらなさというか、感覚というか、、、エッセイならでは、随所に『宇江佐さんらしさ』がじんわりと滲み出ています。

 
エッセイなんだから当然なのかもしれませんが、同じエッセイでも、自己主張のはっきりしたもの、明るいもの、暗いもの、などなど、色々あると思うんですね。宇江佐さんの場合は、地に足がついていながら、じわりと味のある感じ、ですかね。


主婦である自分、と
作家である自分。


どちらも自分でありながら、どちらの仕事もしっかりとこなしている。 
しかし、基本的に主婦目線で、まるで一家の台所でちょっと話しているかのような。
そのあたりが、何か安心感を持って読める印象なのかもしれません。小説の方にも、このイメージは通じるものがあります。


そして宇江佐さんといえば、乳癌にて惜しくも他界されてしまったのですが、乳癌とわかってから書かれた『私の乳癌リポート』も収録されており、もちろん興味深く読ませていただきましたが、それ以前に書かれた部分で、中島梓さんの『転移』『ガン病棟のピーターラビット』について触れられており、とても驚きました。

 
私は中島梓さん(栗本薫名義で多数の小説を書いている)の作品がとても好きだったため、ガン病棟の〜の方は読んでいました。

この時点では、宇江佐さんはご自身の病気にはまだ気づかれていなかったのです。
佐野洋子さんのエッセイ集も読まれ、
『お二人は最後まで毅然としていらして、文章にめそめそしたものは感じられなかった。その潔さに、ただただ感心していた。作家たるもの、こうあらねばと心底思ったものである。』と、記されています。

しかし、宇江佐さんもやはり、毅然としていらした、とこの本を読んで思います。
むしろそのようなところも超越しているような感さえありました。
 
文庫のためのあとがきに、
『昨日と同じ今日でいい』とあります。
『生きているだけでいい』とも。

まだ死にません、と書かれた平成27年の夏。

もっともっと、生きてたくさんの作品を書いていただきたかったという気持ちが改めてわいてきます。切ないですね。


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最後までお読みいただきありがとうございました。