これ、読んだ?

小説や実用書、コミック、漫画、新書、雑誌、児童書、絵本などを紹介するブログです。毎週月曜日を中心に更新しています。

『ビート・キッズ(講談社文庫)』風野 潮 著  VOL.74

こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「ビート・キッズ(講談社文庫)」風野 潮著 を紹介します。



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「横山くん、タイコ好きぃ?」
「はあ?タイ子って誰?」

 
太鼓が好きかと聞かれて、タイ子って誰と返す中学生、横山英二。
この英二が、天然ボケを全編に渡ってぶちかましています。しかもリズミカルな大阪弁で。


少し身体が弱くて身重な母親と、ギャンブルですぐ給料使い込んで、酒呑みでしかも暴れたり物投げたり、家に帰って来なかったりと散々だけど、やっぱり天然ボケで英二と似てる父親。(英二が似てる?)英二はグレもせず素直でいい子で、ちょっとアホな子かもしれないけど、常にまっすぐなのです。
 

タイコ好き?と聞いてきたのはブラスバンド部の竹内望。
同じクラスで目立つけど、あまりしゃべったことがない。というか転校生の英二は、クラスメイトとあんまりしゃべってない。なのに望は、ブラスバンド部の菅野くんが、誘えと言ったからと英二をブラスバンド部のパーカッションに誘います。

 
そして、人に逆らうことが苦手な英二は、とりあえずブラスバンド部へ行き、菅野と会うのですが、この菅野が相当な独裁者!実際いたらイヤだろうなーと思うぐらいの命令口調。でも何故かみんな従っている。そんな菅野に、大太鼓を叩いてみろ、とやはり命令する菅野。命令形でしかしゃべれんのかこいつ、と腹が立った英二は、力任せに太鼓を叩きますが、、、


音楽を文章で書くのは、とても難しいような気がします。
実際、鳴っている音を表現するより、音を聞いた方がずっと早いし、説明もいらない。

 
しかし、英二がまるきりの音楽初心者で、なし崩し的にブラスバンド部に入ることになったときも、菅野がその場にいる全員に、 「彼がパーカッションの新人の、横山くんです」と言うのですが、それを聞いて、俺もなんかみんなにあいさつしよ、と思って出た言葉が「あのぅ……パーカッションって何?」と、言うぐらい何も知らない。なので音楽のことは英二目線で、感覚的にすんなり入ってきます。


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英二の家庭のこと、七生(菅野)の家庭のこと、どちらも大変だったり複雑だったりしながら、英二と七生、一緒にいることでお互いの力になり支えになっている様子にほっとします。


そして、ちゃらんぽらんな英二の父親に、おばあさんが説教するシーン。
「あんたは、人にやさしい以上に、自分にまでやさしい。自分を甘やかしてしもてますのや。」
なんで、こんな人と娘の結婚を許したかと思ってたけど、本当はやさしい人だと信じているおばあさん。
でも、やさしさで自分を甘やかして逃げてばかりの父親。

 
英二もまだ子どもなのに、一生懸命頑張って、でも両親は自分たちで手一杯で、英二のことは心配もしてくれない。と辛いとき、七生がいてくれる。七生が辛い時に英二がいたように。


そこにいてくれる、そんな友達がいることのありがたさと喜びが、この小説にはあります。 
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。  

『星の瞳のシルエット 1(集英社文庫)』柊あおい 著  VOL.73

こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「星の瞳のシルエット 1(集英社文庫)」柊あおい 著 を紹介します。



20161108-bloggazo



感想・書評
 
『250万乙女のバイブル』
そんなキャッチフレーズで、りぼんという月刊の漫画雑誌に連載されていました。

 
確かに、毎月毎月「次はどうなっちゃうんだろう?」とハラハラしながら読み、読み終わっては友達とあーだこうだと話して盛り上がる、そんなマンガでした!


主人公の沢渡香澄は、小さな頃に見知らぬ男の子からもらった『星のかけら』を大切に持っています。その子と出会ったすすきの原での想い出と一緒に、星のかけらをとても大切にしています。
『すすきの原の男の子』のことは、いわゆる初恋のエピソードですね。


設定としては、中学生でそろそろ好きな人の一人や二人出てくるお年ごろ。
親友の真理子、沙樹ともそんな話になり、真理子の好きになった男の子を教えてもらったところ、少しづつその子のことが気になるようになり、、、


真理子の好きな人なのに、と自分を抑えようとする香澄と、そんな香澄の気持ちに気づきながらも、本人に言われるまで決して余計なことはせず、真理子のことも香澄のことも見守る沙樹。


真理子が好きになったのは、弓道部に所属している、久住智史という男の子でした。
沙樹の幼なじみでもある、白石司も弓道部に所属していることもあり、香澄、真理子、沙樹、久住、司の5人は仲良くなっていきます。


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最初は香澄のことを知らず、当初は沢渡さん、と呼んでいた久住ですが、いつの間にか香澄ちゃん、と香澄のことだけは名前で呼ぶようになります。

 
その久住を好きな真理子。
久住をだんだん好きになりつつある香澄。
ケンカばかりしているけれど、実は司のことが好きな沙樹。
プレイボーイを自認し、女の子と遊びまくっていたのに、いつの間にか香澄を好きになり、猛勉強して香澄と同じ学校へ入る司。
そして久住の気持ちは香澄へと、、、


という、これだけでもハラハラすること間違いなしなのですが、途中で実はすすきの原の男の子が、久住だったことがわかるのです!こうなるともう、香澄の気持ちは止められません。それでも、真理子の気持ちを思って打ち明けることはなく。


この三人の微妙なバランスが、危ういながらも保たれていたのですが、中学の卒業式で、真理子が香澄の気持ちを問いただし、香澄は久住のことはただの友達だと言い、それを久住に聞かれてしまい、真理子と香澄のバランスは壊れてしまいます。


この付き合う付き合わない以前の、恋愛と友情の間で揺れる感情を、とても丁寧に描いたところが、絶大な人気を誇る連載になったのでしょうか。香澄と真理子が仲違いしてしまったまま始まる高校生活、そして書ききれませんがラストまでもさらに色々と事件は起きるのですが、テンポよく話が進み、うまくまとまってるなあ!と、今回改めて読み返して思いました。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。 

『和算の侍(新潮文庫)』鳴海 風 著  VOL.72

こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「和算の侍(新潮文庫)」鳴海 風著 を紹介します。



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内容紹介(あらすじ)

天才算術家関孝和に師事し、葛藤する中で円理を究めた高弟建部賢弘(かたひろ)。


その苦闘の生涯を描く「円周率を計算した男」(歴史文学賞受賞)ほか、独学にして大酒飲みの奇才久留島義太(よしひろ)、算学者であり大名だった有馬頼徸(よるゆき)、百姓出身で孤高の算術家山口和(かず)など、江戸の天才数学者たちを主人公に、数奇な人生模様を情感溢れる筆致で描く、和算時代小説の傑作。『円周率を計算した男』改題。



著者紹介

鳴海 風(なるみふう)


新潟県生まれの小説家。学生時代より小説家を志す。1980年、日本電装(現デンソー)入社。1987年より新鷹会の勉強会に参加し、作家としてのキャリアを積む。平山諦著『和算の歴史』に出会ったことがきっかけで、和算を題材とした作品を手掛けるようになり、1992年に、和算家建部賢弘が主人公の短編『円周率を計算した男』で歴史文学賞を受賞。



書評・感想

和算とは、日本独自に発達した数学のことで、特に江戸時代後期には数学ブームとでもいうように、大いに発展したそうです。
 

ええっ、数学が題材?と少し不思議な感じでしたが、問題を解いたりする必要はもちろんありません。
当時の算術書の名前などが出てくるのですが、なんというのでしょうか、当然外国の言葉ではなく、美しい日本語の題がつけられてます。


算術の入門書である『塵劫記』。
算聖とも言われる、和算を大いに発展させた関孝和の『発微算法』。
他にも、円周率の計算方法が書かれた『算爼』。
『古今算法記』『求円周率術』など…


当時は算術書だけではなく、算額と言って、額や絵馬に和算の問題や解法を記してしたものがありました。


著者は機械工学を専攻し、会社では生産技術者として働いており、和算の研究大会に参加し、関孝和数学研究所の研究員にもなっています。そのため数学に明るく、本書でも現代の数学で表した式などまできちんとつけられています。

 
数学好きなら、現代の数学と比べてみる楽しみもありますし、数学は苦手、そんな式なんて見たってわからないよ、という方でも問題なく、明快な文章で書かれており、その理路整然としたあたりはやはり研究者ならではかな?と思うのですが、数式など全く理解出来なくても問題なく読めるのです。それどころか、江戸時代にこんなことまで研究されていたんだ、と感動さえ覚えます。


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そして、本書は和算が大きく関わっていますが、和算の研究書ではなく、和算というものに打ち込んだ、というかとりつかれたというか、、、和算とともに生きた人々の人生を、理路整然と、しかし趣き深く描いている、そんな小説となっています。


剣豪を主人公とした小説が、必ずしも読者が剣豪でなくても、自分が剣の達人になったかのように楽しめたり(そんなに剣豪とかいませんよね)推理小説が探偵でなくても、頭脳明晰な名探偵になったかのごとく楽しめたり(探偵もなかなかいませんよね)

 
知らない分野を、まるで自分も知っているかのように、自分も体験しているかのように楽しめるのが小説の醍醐味でもあるなら、この和算を題材にした小説は、まるで自分が算術家であるかのように楽しめます。


現代とは違う、想像以上に深く極められていた和算の世界。
しかし、そんな知識が全く無くても、小説として充分に楽しめるようになっています。 


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。 

『PRESIDENT (プレジデント) 2016年 11/14号 [雑誌]』  VOL.71

こんにちは、スタッフのK・Sです。
今日は『PRESIDENT (プレジデント) 2016年 11/14号 [雑誌]』を紹介します。



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内容紹介

この先30 年、お金の安心を約束♪
上流老後、下流老後 あなたはどっちだ?

 

感想・書評

雑誌『PRESIDENT(プレジデント)』は隔週の月曜日に販売されていますが、今回の特集は誰もが気になる『老後のお金』についての特集です。


『上流老後』、『下流老後』。
まさに今が分かれ目です。


家計簿はつけていますか?
投資や貯金はどうしよう?
子どもは独立するのか?
定年後のビジョンを考えていますか?


老後のことを考えて今から行動する、なんてことは年代にもよりますが現実的には難しいのでは、と思います。
お金のことを考えて、今すぐ貯金をやめて投資しましょう・・・とか、
健康が第一だから、毎日運動しましょう・・・とか、
栄養のバランスを考えて、サプリメントを摂取する・・・とか。


うん、きっと難しいです。無理かも。
老後のことよりも今を考えてしまうのが人間です。


しかし、老後は必ず訪れます。



PRESIDENT (プレジデント) 2016年 11/14号 [雑誌]





老後のことを真剣に考えて行動することは大変ですが、まずはページをめくって老後についての情報収集として気軽に読んでみてはいかがでしょうか。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。 

『玉川兄弟―江戸上水ものがたり (文春文庫) 』杉本苑子 著 VOL.70

こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「玉川兄弟(文春文庫)」杉本苑子 著 を紹介します。



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内容紹介(あらすじ)

若年ながら包容力のある穏和な兄・庄右衛門。
男気で人を集めるいなせな弟・清右衛門。


二人を玉川上水開鑿に駆り立てたものは何か。
立ちはだかる自然の猛威に二度も工事中断を強いられながら、幕府の仕掛けた思わぬワナ、信頼する普請奉行の切腹など多くの困難を乗り越え、江戸に命の水をひいた兄弟の感動巨編。



著者紹介

杉本 苑子(すぎもと そのこ)


1952年、「燐の譜」で『サンデー毎日』の懸賞小説に入選、選考委員である吉川英治に師事する。吉川死去の翌年、『孤愁の岸』で第48回直木賞を受賞する。以後、歴史小説家として活躍する。一般向けの歴史書も記している。1985年に『春の波濤』(原作『マダム貞奴』、『冥府回廊』)がNHK大河ドラマとして放映される。



感想・書評

玉川兄弟、と聞いてピンと来る方はけっこういるのでしょうか。
恥ずかしながら、私は数年前までその存在を知りませんでした。いえ、歴史の授業でチラッと見かけたかもしれませんが、覚えていません。東京の西側にお住いの方は、地元の歴史などでとても馴染み深い名前かもしれません。


徳川家康が開いた江戸の街は、井戸を掘っても海が近い、もしくは海を埋め立てた土地のために真水が出ず、人々は飲み水に大変苦労していました。そのために起きた数々の争いや悲劇、「せめてゆたかに良水さえらあったら…」そんな思いが人々に共通していた時代。
 

時の幕府も、水不足を解消すべく動き出し、多摩川の水を江戸市中へ引く壮大な計画が動き出しました。土木工事を請け負う業者に内々に話が伝えられ、どの業者もこの大仕事を請け負うべく必死に動きます。
主人公の桝屋庄右衛門、清右衛門の兄弟もそのような業者の一つでした。庄右衛門が主人公となり、話が進められて行きます。


先ほど挙げたような水不足のための悲劇。
大規模な、それこそ一生に一度、あるかないかのドカ儲けの好機。
この仕事を成功させた暁の、桝屋への賞賛と名誉。
多摩川の水を江戸市中に引き込む、と聞いた時の心の高鳴り。
庄右衛門、清右衛門兄弟は武州羽村の生まれで、村の崖下を削って流れる多摩川の清流に育てられたに等しい。「ひとにはこの仕事、渡せないぞ」なんとしてもこの仕事を取ろう、と奔走します。


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その甲斐あって無事に落札することが出来たのですが、目の回るような忙しさ、恐らく同業者からの嫌がらせや大切な資材への放火ら工事予定の多摩川の周りに住む人々の訴え…


資金もいくらあっても足りず、羽村の実家へ借金を申し込みますが、取水口を羽村にしなかったことから、一同の怒りを買い、お金の融通はしてもらえず、金策に走り回る庄右衛門と清右衛門。

 
工事の完成による地位や名誉、そしてその工事での儲け…落札するために見積もりから利益は削ってしまい、少ない金額での工事費なために、あらゆる手段、手腕、抜け道、裏工作を駆使し、儲けを出したい。手抜きや材料のごまかしも、しないとは断言出来ない。
 

それゆえに、監督官の立場である官吏の伊奈半十郎の厳しい目に、うしろめたさを感じつつぶつかっていかなくてはいけない時が来て、腹を割って話す半十郎に庄右衛門は様々なものが吹っ切れ、この大工事に向かう根本姿勢をつかむ。
 

そして工事が始まります。

 
まだ様々な苦労や苦難が待ち受けるはずですが、どのように水を引き上水を完成させるのか。
落ち着いた筆致で進められる話に、安心して読み進めていける感動巨編です。 


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。    
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