こんにちは、スタッフのA・Sです。
今日は「ビート・キッズ(講談社文庫)」風野 潮著 を紹介します。
「横山くん、タイコ好きぃ?」
「はあ?タイ子って誰?」
太鼓が好きかと聞かれて、タイ子って誰と返す中学生、横山英二。
この英二が、天然ボケを全編に渡ってぶちかましています。しかもリズミカルな大阪弁で。
少し身体が弱くて身重な母親と、ギャンブルですぐ給料使い込んで、酒呑みでしかも暴れたり物投げたり、家に帰って来なかったりと散々だけど、やっぱり天然ボケで英二と似てる父親。(英二が似てる?)英二はグレもせず素直でいい子で、ちょっとアホな子かもしれないけど、常にまっすぐなのです。
タイコ好き?と聞いてきたのはブラスバンド部の竹内望。
同じクラスで目立つけど、あまりしゃべったことがない。というか転校生の英二は、クラスメイトとあんまりしゃべってない。なのに望は、ブラスバンド部の菅野くんが、誘えと言ったからと英二をブラスバンド部のパーカッションに誘います。
同じクラスで目立つけど、あまりしゃべったことがない。というか転校生の英二は、クラスメイトとあんまりしゃべってない。なのに望は、ブラスバンド部の菅野くんが、誘えと言ったからと英二をブラスバンド部のパーカッションに誘います。
そして、人に逆らうことが苦手な英二は、とりあえずブラスバンド部へ行き、菅野と会うのですが、この菅野が相当な独裁者!実際いたらイヤだろうなーと思うぐらいの命令口調。でも何故かみんな従っている。そんな菅野に、大太鼓を叩いてみろ、とやはり命令する菅野。命令形でしかしゃべれんのかこいつ、と腹が立った英二は、力任せに太鼓を叩きますが、、、
音楽を文章で書くのは、とても難しいような気がします。
実際、鳴っている音を表現するより、音を聞いた方がずっと早いし、説明もいらない。
実際、鳴っている音を表現するより、音を聞いた方がずっと早いし、説明もいらない。
しかし、英二がまるきりの音楽初心者で、なし崩し的にブラスバンド部に入ることになったときも、菅野がその場にいる全員に、 「彼がパーカッションの新人の、横山くんです」と言うのですが、それを聞いて、俺もなんかみんなにあいさつしよ、と思って出た言葉が「あのぅ……パーカッションって何?」と、言うぐらい何も知らない。なので音楽のことは英二目線で、感覚的にすんなり入ってきます。
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英二の家庭のこと、七生(菅野)の家庭のこと、どちらも大変だったり複雑だったりしながら、英二と七生、一緒にいることでお互いの力になり支えになっている様子にほっとします。
そして、ちゃらんぽらんな英二の父親に、おばあさんが説教するシーン。
「あんたは、人にやさしい以上に、自分にまでやさしい。自分を甘やかしてしもてますのや。」
なんで、こんな人と娘の結婚を許したかと思ってたけど、本当はやさしい人だと信じているおばあさん。
でも、やさしさで自分を甘やかして逃げてばかりの父親。
英二もまだ子どもなのに、一生懸命頑張って、でも両親は自分たちで手一杯で、英二のことは心配もしてくれない。と辛いとき、七生がいてくれる。七生が辛い時に英二がいたように。
そこにいてくれる、そんな友達がいることのありがたさと喜びが、この小説にはあります。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。